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正しい呼吸とは?

執筆者の写真: 院長院長

以前から私は「風邪の治療には何より鼻かみ、鼻うがい」をモットーに鼻うがい指導、薬は出しても鼻水のネバネネバ取りのワンパターンを続けています。


理由は多くの風邪ウイルスがまず上咽頭(のどちんこの裏側あたり)に炎症を起こして発症してくるからです。

インフルエンザやコロナの検査で長い綿棒を鼻に突っ込まれる理由はここにあります。


もちろん気管支炎や肺炎などの下気道感染と言われるものや一部細菌感染のように鼻うがいや鼻水の薬だけでは対処しきれないものがあるのは事実ですが、咳、鼻水、鼻詰まりなどの症状の多くは鼻うがいでかなり改善します。

さらに鼻のトラブルは感染症以外にも睡眠障害や顔や胸郭など骨格の異常、更には睡眠障害に伴う様々な二次障害にも関わってきます。




そんなとき第56回日本小児呼吸器学会にどうしても聴きたい講演があったので参加してきました。

タイトルはズバリ正しい呼吸とは何か?」3人の専門家(歯科・耳鼻科・トレーナー)によるシンポジウムでした。要約とはいえ長文になりますが、最後まで目を通していただけると幸いです。


(1)口呼吸の何が正しくない?」 ~歯科医の視点から~

外木 守雄 先生 亀田総合病院、顎変形症治療センター睡眠外科 センター長


●口呼吸が体に与える影響について詳しく教えていただきました。

  1. 感染リスクの上昇: 鼻は空気清浄機。口呼吸では、ウイルスや細菌が直接気管支に入りやすくなり、感染症にかかりやすくなること。

  2. 乾燥による不快感: 口呼吸は喉を乾燥させ、声がかすれたり、口臭が気になったり、味覚が鈍くなったりする原因になりこと。

  3. 睡眠の質低下: 口呼吸は、いびきや睡眠時無呼吸症の原因となり、睡眠の質を低下させること。

  4. 子どもの成長への影響※: 口呼吸は、顔の骨の発育に影響を与え、顔の形が変わる可能性があること。

※ショッキングな顎の変形や胸郭の変形写真が例示されていました。



(2)「正しい鼻呼吸のススメ」 ~耳鼻咽喉科医の視点から~ 

鈴木 雅明 先生 帝京大学ちば総合医療センター 耳鼻咽喉科 教授


●鼻呼吸の生理的なメカニズム、口呼吸が体に与える影響、子どもの鼻詰まり・口呼吸の原因と治療について動画を用いて詳しく解説しておられました。

(1)の講演内容と重複する部分はありましたが、とくに印象に残ったのは

  1. 夜間の口呼吸で咽頭腔(口を開いた時に見える空間)が潰れてしまっていること。

  2. 上気道(鼻や口から声帯までの部分)の抵抗が閉口時と比べて2.5倍と高くなる(≒空気が流れにくくなる)こと。

  3. 鼻呼吸ができていると呼吸経路全体にわたって空気がスムースに流れているのに対して、口呼吸では気流が著しく乱れること。

  4. 口呼吸では咽頭腔や胸郭に陰圧がかかりやすくなり咽頭腔が虚脱し胸郭変形にも関係すること。

  5. 無呼吸がなくてもいびきがあれば覚醒反応が起こり睡眠の質が著しく低下すること。



(3)「正しい呼吸法とは? ~フィジカルトレーナーの視点から~ 

柴田 晃伺 様 ヒューマンテクノ(株)スポーツ・健康科学部 部長 肺活チーフトレーナー


●小児期に正しい呼吸を習得、習慣化することは成人後も心身ともに健康に過ごすことに役立つことや具体的な呼吸トレーニングを指導していただきました(著作権の関係で動画を出すことができません)。



  1. 印象に残ったのは、正しい這い這い※が呼吸筋群のトレーニングにつながるという点でした。

※乳児健診をしておりますと這い這いが上手にできない(左右差があるなど)子どもが意外に多いです。

発達性協調運動症という概念で、ハンドリング(遊びの中で行う体操)や理学療法につなげていますが、

呼吸機能にも関わっていると思うと上手な這い這いをすることの大切さをあらためて痛感しました。



【ひとこと】

口呼吸に伴う著しい骨格変形や換気効率の悪化は驚きでした。

最近はこどもでも閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が問題になっています。

OSAの伴う睡眠の質の低下は、学習障害や性格変容、AD/HDに誤認されるなど子どもたちの心身への影響が著しく、ひいては将来の社会的損失につながります。

OSAの原因にアデノイドの肥大やアレルギー性鼻炎などがありますが、内科的治療での改善が困難な場合は外科的治療が必要になることもあります。

あきらかなOSAを認めなかっても、子どもたちの口呼吸やいびきには注意を払って適切な治療を受けさせてあげてください。


院長

2024.12.6



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